おちゃらけミクロ経済学: 限界生産物曲線
ラベル 限界生産物曲線 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 限界生産物曲線 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2012年11月18日日曜日

限界収穫逓減の法則その5

「人口論」と「北斗の拳」




前回のブログでは、飢餓と疫病(と戦争)で、人口の増加が、頭打ちになるという、
アニメ・「北斗の拳」さながらの、すさまじい結論で、記事を締めくくりました。



この結論は、19世紀のイギリスの経済学者、ロバート・マルサスと言う人物が、
あらわした「人口論」という著書にもとづいています。



「北斗の拳」では、確かに人類は、飢餓と疫病(と戦争)に苦しんでいましたが、
マルサスの結論は、本当に正しかったのでしょうか?





戦争

Outdoor Exhibition / d'n'c



人口論「半分ハズレ」のワケ



マルサスの「予言」に対する答えは、「半分ハズレ」で、「半分あたり」と言うのが、
現代のミクロ経済学上の評価です。




「半分ハズレ」というのは、直感的に分かると思います。
というのは、マルサスよりもずっと後に生まれた管理人も、
当ブログを読んでくださっている読者の方も、今もって生き残っているからです。
19世紀の世界と、21世紀の世界と比べて、人口は飛躍的に増加しています



では、なぜマルサスは、結論を「ハズして」しまったのでしょうか?
ちなみに、マルサスは「人口論」という名前の本を出版するぐらいで、
今もって人口研究に関する権威です。




>東京大学図書館

東京大学図書館 / 柏翰 / ポーハン / POHAN




人口論「半分あたり」のワケ



それでは、「半分あたり」について、現代の経済学者に、「ご説明」を願いましょう。



"おそらく18世紀のフランス農民たちがピラミッド時代のエジプト農民よりも良い暮らしをしていたということではない。だが18世紀以降の技術進歩が、あまりにも急速だったために、収穫逓減が引き起こす問題を打ち消してしまったのだ"

ポール・クルーグマン「クルーグマンミクロ経済学」東洋経済新報社(P221)



クルーグマンの説明を補足すると、以下のようになります。



18世紀になって人間が、紀元前のピラミッド時代に生きた人間よりも、ぜいたくなものを
たくさん食べはじめて、人口増加の危機が叫ばれたわけではありません。



紀元前から18世紀までの「ゆくっりとした」農業技術の進歩では、
いずれ、食糧の増産が、人口の増加に追いつかなくなるということが、マルサスの予想でした。




ただ、18世紀以降の農業の技術進歩が、
マルサスの人口増加の予想をはるかに超えるものであったため、
限界収穫逓減の法則による食糧不足の問題を、解消してしまったのです。






農業

CIMG1953 / max.takaki




次回では、技術進歩が打ち消した限界収穫逓減の法則について考えてみましょう。
経済学は、単なる「陰鬱な科学」ではありません!!!
(つづく)










2012年11月17日土曜日

限界収穫逓減の法則その4


百貨店外商と限界収穫逓減の法則



前回のブログで、個人的体験にもとづき、
百貨店の外商営業と、限界収穫逓減の法則の関係を、書かせていただきました。



未開拓の顧客層に営業をかけた当初は、生産量(売上)の伸び率は、すさまじいものです。
しかし「掘り起こし」が行きわたると、生産量(売上)の伸び率は、鈍化します。



厳しい限界収穫逓減の「現実」




限界収穫逓減の法則その1では、かつてIBM社でソフトウェアの開発を担当していた、
フレデリック・ブルックス,Jrが、登場しました。




そのブルックス,Jrが示した限界収穫逓減の法則による、プログラムコード生成の現実は、
さらに厳しいものでした。その考え方をグラフで表すと、以下の通りになります。








ブルックス,Jrが示す限界収穫逓減の法則




ブルックス,Jrが示す限界生産物曲線










なんと、プログラマー(労働投入量)の数が、
ある一定数を超えると、出来上がるプログラムコード数が、減少していくのです。
1人当たりのプログラムコードの生成数も、プラスからマイナスに転じます



ブルックス,Jrの著者、「人月の神話」の、復刻版書評を書いた人が、
上の2つのグラフについて、的確な表現をしています。



"プログラマーたちの強度作業にはどうしても必要になる費用がある。チームのやり取りのメンバーは会議に出席したり、プロジェクトの計画案を練ったり、電子メールのやりとりをしたり、プログラムの接続方法について相談したり、パフォーマンスのチェックに労力を使ったりといった具合に『時間を浪費』することになる(中略)マイクロソフト社では、チームのなかに少なくとも1人は、他のメンバーが着るTシャツのデザインに専従する人員がいる、ということにもなりかねないのだ"

ポール・クルーグマン「クルーグマン・ミクロ経済学」東洋経済新報社(P223)



つまり、ソフトウェア開発チームの人数が、多くなりすぎると、
メンバー間での、間接的なコミュニケーションに時間が費やされ、
本来行うべき、プログラミング業務が出来なくなるというこです。



経済学は「陰鬱な科学」か?




限界生産物が逓減していくということは、ブルックス,Jrの洞察によって、
はじめて発見されたことではありません。


以前登場した、18世紀・イギリスの経済学者、ロバート・マルサス
「人口論」でも、限界収穫逓減の法則に基づいた、食糧危機について、やはり論じていました。



「人口論」の結論を述べると、限りある土地の下では、
農業生産量は、「倍数」でしか増えないの対し、人口は、「累乗」で増加してしまうということです。



やがて、飢餓と疫病(と付随的に発生する戦争)による、人口抑制が行われたときに、
人類は生き残り、常に貧困状態にあるのが当たり前、というすさまじい結論です。





台風一過

台風一過 / amika_san




時おり、「経済学は陰鬱な科学である」と揶揄されることがあります。
それは、上記のような悲惨な結果について、危惧された言葉である、と考えられています。
しかしながら、このようなマルサスの結論は、正しかったのでしょうか?
(つづく)











2012年11月16日金曜日

限界収穫逓減の法則その3


限界生産物を「計算式」で表してみよう!



前回のブログで、数値例を用いて、限界生産物について考えてみました。




プログラムコードの総生成量と限界生成量



プログラムコードの総生成量と限界生成量




限界生産物(ここでいうプログラムコードの限界生成量)とは、
「もう1単位労働力を追加したときの生産量の増加分」を表します。
この「増加分」を、計算式で表すと以下の通りです。



労働の限界生産物=生産量の変化/労働投入量の変化=限界生産物
(限界生産物MPL=⊿Q/⊿L)



なぜ限界生産物を求める計算式があるのか?




(数値例)では、プログラマー(労働力)が一人ずつ投入された場合の、
データを表しています。確かに5人、6人、7人と一単位ずつ労働力が増えていくときは、
生産量の増分が、分かり易くで助かります。



現実には、40人から45人、そして60人など、
1単位ごとの、増分データが入らないときもあります。
そのようなとき、上記の計算式を使うと、生産物の限界生産物が求められます。



数値例から分かるように限界収穫逓減の法則とは、
限界生産物が、次第に減少することを、指すことになります。




「限界収穫逓減の法則」具体例




限界収穫逓減の法則について、個人的な体験にもとづいて、具体例を挙げてみましょう。



管理人は、以前ある百貨店の外商部に勤めていました。
最初に担当させていただいたのは、
それまでほとんど、対面営業を行ってこなかった顧客層でした。





百貨店の外商部

Isetan Tachikawa / Dick Thomas Johnson




この顧客層に、管理人が、営業を訪問や対面営業を行うことによって、
担当後、3カ月ぐらいは、この層における売上伸び率について、
前年比300%とか、250%とか、不景気なご時世に、ありえないくらいの
「数字」をたたき出していました。



もっとも、限界収穫逓減の法則に基づいて考えると、当然の結果です。
顧客層に労働(営業)をほとんど投入していなかったため、
当初の生産量(売上)の「伸び率」はすさまじいものになります。



ですが、3か月もたって労働(営業)が一巡すると、
限界収穫逓減の法則がある以上、「伸び率」は、
陰りを見せ始めます。外商を担当して1年近くになると、
売上伸び率は、いつも100%前後で、四苦八苦していました。



そこらへんから、既存顧客だけでは、営業ができないことに気づき始め、
新規顧客開拓に回ったのは、言うまでもありません(笑)
(つづく)















2012年11月11日日曜日

限界収穫逓減の法則 その2


「人口論」と「人月の神話」からみる総生産曲線





前回のブログで、時代も立場も異なる、2つの著書に見る、
共通性を通じて、問題提起を行いました。


  • ロバート・マルサス「人口論」
  • フレデリック・ブルックス,Jr「人月の神話」


マルサスは、19世紀のイギリスの経済学者で、
ブルックス,Jrは、20世紀のアメリカのソフトウェア技術者です。




そこで、当ブログで、いつも行っている、「グラフ式思考法」で考えてみましょう。
すると、以下のような、総生産曲線が出来上がります。



マルサスとブルックスJrの曲線





マルサスとブルックスJrの曲線







このグラフをよく観察すると、以下のような特徴が、挙げられます。





  • 労働投入量が少ないときは、傾きが大きい
  • 労働投入量が多いときは、傾きが小さい




つまり、労働投入量が変化するに従って、生産量の増加が鈍っているように見えます。



マルサスとブルックスの曲線の特徴(曲線の接線の特徴)




マルサスとブルックスの曲線の特徴(曲線の接線の特徴)







「微分」を思い出してみよう!





労働投入量が、追加的に変化しているときに、
生産量の増加率が、どれぐらい変化しているかを、分析するためには、
微分の概念が、非常に有効です。






トラクター、労働量の投入

Tractor / ototadana



ここでいう微分とは、dx/dyや⊿yなど記号を使った、計算式を展開することではありません。
単に「変化率を測る」ぐらいの、意味に置き換えてくだされば、結構です。
(微分に関する詳しいブログは、コチラ



その「変化率」をグラフにして表すと、次のような右下がりのグラフになります。
これを、限界生産物曲線と言います。



限界生産物曲線




限界生産物曲線





「数字」にして書き出してみよう!





先にあげた総生産曲線と、限界生産物曲線の、2種類のグラフが、
今回のテーマである、「限界収穫逓減の法則」のミソになります。




ブルックス,Jrのように、ソフトウェア開発における、プログラムコードを使った、
数値の例を用いて、限界生産曲線とは、どんな現象なのかを、確認してみましょう。



プログラムコードの総生成量と限界生成量




プログラムコードの総生成量と限界生成量




労働投入量、つまり、プログラマーを増やすに従って、
プログラムコードの総量は、確かに増加していますが、その増加量は、次第に鈍っています





プログラムコード、コンピュータ

4bit computer / torisan3500




この現象を、ミクロ経済学的に説明をすると、
「もう1単位の労働を追加したときの限界生産物は減少している」、という説明になります。




ここでいう限界とは、「追加的な」という意味に置き換えてください。
二重的な修飾で、日本語としてちょっとおかしい気もしますが、
経済学では、こういう言い方をするようです。
(つづく)