おちゃらけミクロ経済学: 2014

2014年3月13日木曜日

ミクロ経済学とマクロ経済学の違い その3

「経済政策」と「経済集計量による分析」について




前回、前々回に引き続き、
ミクロ経済学とマクロ経済学の違いを考えていきましょう。
今回は、「経済政策」「経済集計量による分析」です。




via Tumblr http://bit.ly/18seHAo / pds209




経済政策


ミクロ経済学とマクロ経済学の違い(経済政策)






〔ミクロ経済学〕


政府の役割は限定的。原則的に政府は市場に介入すべきではない。


具体的なニュースを例として用いると、タクシーの規制問題などが挙げられます。
これらの記事を読んでいると、政府の役割はタクシー市場は適切に
機能するよう手を尽くすことであることが、書かれています。


HUFFPOST SOCIETY
「格安タクシー」が消える? タクシー業界の規制が強化される理由とは


朝日新聞デジタル
タクシー規制―構造改革が欠かせない



〔マクロ経済学〕


政府は広範な役割を果たす。
財政政策や金融政策でもって市場に介入することができる。




具体的な例を用いると、消費税の増税問題や
アベノミクスの第一の矢の金融緩和政策などが挙げられます。

財務省 
消費税引き上げの理由



内閣府
安倍内閣の経済財政政策



経済集計量による分析



ミクロ経済学とマクロ経済学の違い(経済集計量による分析)






財、サービス、労働、資産など、
多様な市場のデータを要約した経済尺度でもって分析する。



これはマクロ経済学独特の用語で、ミクロ経済学には定義がありません。


マクロ経済学では、一定期間内に国内で産み出された
付加価値の総額であるGDPや、経済における
全体的な価格水準を表す物価水準などを用いて、経済の動向を分析します。


このブログは経済集計量を用いて日本経済全体の動向を分析されています。


官庁エコノミストのブログ


(「ミクロ経済学とマクロ経済学の違い」シリーズ終わり)










2014年3月12日水曜日

ミクロ経済学とマクロ経済学の違い その2

「全体と部分の関係」と「長期成長」



前回に引き続きミクロ経済学とマクロ経済学の違いを考えていきましょう。
今回は、「全体と部分の関係」と「長期成長に対する考え方」についてです。




John Maynard Keynes Blogging, after Duncan Grant / Mike Licht, NotionsCapital.com




全体と部分の関係



ミクロ経済学とマクロ経済学の違い(全体と部分の関係)





まず、ミクロ経済学で正しいからそれを積み重ねっていっても、
必ずしもそれが正しいこととは限りません。



部分(ミクロ)が正しくても、全体(マクロ)では、間違ってしまうことがあります。
これを「倹約のパラドックス」という言葉で表すことができます。



〔倹約のパラドックス〕


1.経済が縮小

2.家計や企業は消費を抑制

3.企業の業績は悪化

4.従業員の解雇

5.経済がさらに縮小

(以下同じことの繰り返し…)


ちなみに、「倹約のパラドックス」の逆バージョンとして
「貯蓄のパラドックス」というのもあります。これは部分(ミクロ)は間違っていても、
全体(マクロ)で見ると正しいという例えを表しています。



〔貯蓄のパラドックス〕


1.経済が拡大

2.家計や企業は消費を拡大

3.企業の業績が好調

4.新たな従業員の雇い入れ

5.経済がさらに拡大

(以下同じことの繰り返し…)


〔参考サイト〕

証券投資用語辞典 倹約のパラドックスとは


長期成長に対する考え



ミクロ経済学とマクロ経済学の違い(長期成長に対する考え方)





〔ミクロ経済学〕



経済で生産できる産出量を一定としているため、
長期成長は考慮に入れていない。限られた希少な資源を
いかに効率的に利用するかという問題を考える。



例えば、JR各社は管轄地域のの鉄道輸送量を一定として、
線路や車両を効率的に利用するためには、
運賃をいくらにすべきかという問題を考えます。


〔マクロ経済学〕



社会全体がより高い成長率や高い生活水準を達成するために、
必要な資源の総量をどうしたら増やせるのかを考える。



具体的には必要な資源の総量を増やすためには、
インフラストラクチャー(輸送設備、電気通信など)や
人的資本(教育、労働人口の増大)の整備を行います。

(つづく)
















2014年3月7日金曜日

ミクロ経済学とマクロ経済学の違い その1

ミクロ経済学とマクロ経済学の違いとは何か?



ミクロ経済学を持ちネタにしていると、
「ミクロ経済学とマクロ経済学ってどう違うの?」と聞かれて、
答えに困ったことがあります。



今回のシリーズは、その反省を踏まえて、
ミクロ経済学とマクロ経済学の「違い」を説明していきます。



最後には、ミクロ経済学とマクロ経済学で
それぞれどんな「問題」を分析できるかを見ていきましょう。





Oh, just making bathroom graffiti with my John Maynard Keynes stencil. / Adam Keys




ミクロとマクロの違いは5つの視点から分析できる




まず違いですが、おおよそ次の5つの視点から、両者を区別することができます。

  • 概念
  • 全体と部分
  • 経済政策
  • 経済成長
  • 経済集計量


その上で、ミクロ経済学とマクロ経済学を表で区別すると、
次のとおりになります。


ミクロ経済学とマクロ経済学の違い(まとめ)







ミクロとマクロ~概念の違い



ミクロ経済学とマクロ経済学の違い(概念)







もうこれはそのまんまですね(笑)
クルーグマン ミクロ経済学 にのっている定義をそのまんま使ってます。


表に書いていますが、一応テキストにも起こしておきます。


〔ミクロ経済学〕

人びとがどのように意思決定をし、そのような意思決定が
どう相互作用するかを学ぶ経済学の一分野


〔マクロ経済学〕

経済全体の浮き沈みを研究対象とする経済学の一分野



テキストによって多少言い回しの違いはありますが、
大体こんなところでしょう。大きくは外れていないはず。



次回は、全体と部分、経済政策について比較していきましょう。


(つづく)








2014年2月27日木曜日

経済学ってなに? その2

問題解決のヒントぐらいは出せる経済学



前回では、経済学とは「ありきたりの日常生活」
分析する学問であるということを説明しました。


「ありきたり」と言えば、そこらへんに転がっているような感じで、
大してありがたくとも何ともないかもしれません。


しかしそんな「ありきたり」の経済学でも、
日常の生活に潜む重要な問題をあぶりだし、
解決に貢献できるアイデアを提示することができます。


言い換えると、経済学とは日常生活の問題について
解決ができるかどうかは分からんが、ヒントは出せるよって感じですかね。




Adam Smith / [Duncan]



経済学が解決できそうな問題




その問題とアイデアを一例をあげるとこんなものがあります。


1.「江戸時代の横浜村では見られなかったような
モノやサービスの供給が、現在の横浜市ではいかに実現しているのか?」


2.「横浜市に限らず、日本全体で見たときでも、
経済システムが時々、上手くいかないときがある。
どのような理由で上手くいかなくなり、人びとを非生産的な理由に駆り立てるのか?」


3.「なぜ経済に浮き沈みがあるのか?
経済が年によっては『不景気』となるのはなぜか?」


4.「江戸時代の横浜と現在の横浜を比較すれば分かるように、
長期的に見て経済が、上昇しているのはなぜだろうか?」




ミクロとマクロの視点で日常生活を分析





今回は4つの問題とアイデアを取り出しました。



しかしどれも答えようと思えば本が書けてしまうぐらいのレベルの話なので、
詳しくは立ち入りません。


しかし、大ざっぱではありますが、カテゴライズして問題を整理すると、



  • 1と2の問題→ミクロ経済学
  • 3と4の問題→マクロ経済学


という学問体系で説明することができます。







2014年2月26日水曜日

経済学ってなに? その1

「ありきたりの日常生活」を分析する経済学



ミクロ経済学を持ちネタとして、ブログをやっていると、


「そもそも経済学ってなに?」


という根本的な質問をいただくことがあります。


これらの質問について専門用語を交えて、説明できることは可能です。
ですが特別に難しい言葉を使わず、結論から言ってしまえば、
「ありきたりの日常生活」を分析する学問です。


「ありきたりの日常生活」―現在の横浜



例えば、YouTubeの動画に、こんな動画がUPされています。
この動画を見ると、横浜市営地下鉄センター北駅の様子が伺えます。

「となりのトトロ "さんぽ" 演奏会」フラッシュモブ





Wikipedia-センター北駅




突然、「となりのトトロ」が始まる以外は、今の日本人から見ると、
「ありきたりの光景」なのかもしれません。



横浜市にあるのセンター北駅でなくてもこのような光景は、
特段に珍しいものではないでしょう。



ですが、こういう場面こそ、実は経済学の出番です。
実は、経済学のフィルターを通すと、ありふれた日常の生活の中から、
たくさんの重要な問題を取り出すことができます。




「ありきたりの日常生活」―江戸時代の横浜




例えば、時間を現在ではなく、江戸時代に、巻き戻してみましょう。
横浜と言えば、つい160年前までは、人もまばらな寒村だったはずです。
人はいっぱいいますが、幕府の役人とペリー艦隊の関係者しかいませんね。


1853年、横浜村に来航したペリー一行







この時代の横浜村で「ありきたりの生活を送る人」を
センター北駅前に連れくれば、あまりの繁栄ぶりに、いろんなこと思い巡らすでしょう。



  • 「どうすればこんなに人が集まってくるのか?」
  • 「この豪華な建物はどうやって建てるんだ?」
  • 「どうすればこんなにモノが手に入るのだろうか?」
  • 「どうやったら横浜村でも同じことができるのか」



これらの疑問に答えるのが、社会の生産活動を調整する
システムを考える経済学と言う学問です。

(つづく)






2014年2月20日木曜日

その広告、役に立つの? その3

ブランドネームも商品差別化の戦略



前回の記事では広告が消費者に対して、
「間接的な」情報提供を行うことを説明しました。



同じようなことがファーストフード店が持つブランドネームにも当てはまります。
ブランドネームもやはり「間接的な」情報提供を行います。


例えば、あなたが下のようなショッピングセンターに立ち寄り、
お腹がすいたので食事をしたいときのことを考えてみましょう。


イオン近江八幡ショッピングセンター






ブランドネームが伝える情報とは?




しかし、あなたは特にこのショッピングセンターについて詳しいわけでもなく、
特に食事のメニューについて希望があるわけではありません。
こういうときに頼りになるのがブランドネームです。


【HD】2013/01/18 ON AIR CM (30s) No.005 マクドナルド/朝マック







もしあなたがこのようなCMの情報を受け取っていればマクドナルドという
ブランドネーム自体に食事の価値を見出し、自ら店に行きつくことになります。
よく見ると、赤線で囲ったところにマクドナルドがありますね。







ブランドネームの負の側面




ショッピングセンターにおけるマクドナルドの例は、
ブランドネームが持つ正の側面を表していますが、
ブランドネームは一方で負の側面も持ちます。



ここらへんも広告がもつ賛否両論と非常によく似ています。
反対論がもつ意見としては、次のとおり。


  • ブランドネームは正当化できないほど強い市場支配力を作り出す
  • 同じ内容でもノーブランドの商品よりも高く売られている
  • ブランドネームは消費者の非合理的な心理を操作している。



(「その広告、役に立つの?」シリーズ終わり)




















2014年2月13日木曜日

その広告、役に立つの? その2

「イメージ重視」のCMは資源の無駄遣いか?



「その広告、役に立つの?」と銘打ったシリーズ第2回目は、
シグナルとしての広告の役割を考えてみましょう。



今回は、企業の広告活動が合理的なのか、資源の無駄遣いか判断するのは、
結構難しい問題であるということについて、事例で説明していきます。



例えば、YouTube動画でCM動画を検索していると、大きく次の2種類の
広告に分類できます。1つは「情報提供型」でもう一つは「イメージ型」です。





NTT東日本 広告 / k14





「情報提供」のヨドバシ、「イメージ」のペプシ




「情報提供型」のCMで目に付いたのが、このヨドバシカメラのCM。、
商品のラインナップやアフターサービスなど消費者が家電製品を購入するための
情報提供を行っていることが分かります。


ヨドバシカメラ TVCM 2011年8月~9月









一方、(ちょっと古いけど)このペプシコーラのCMは、「イメージ型」といえるでしょう。
特にコーラを飲むための作法を教えている訳でもなく、イチローが飲むペプシコーラを
買って飲めば、なんだかとってもさわやかな気分になれそうです。


イチロー ペプシコーラ CM 2002







「イメージ」は間接的な「情報提供」




ヨドバシカメラのCMは、情報提供色が強いため、何のためのCMか分かりやすいでしょう。
またCMを見ることで店まで行って家電製品を購入するかどうか、意思決定ができそうです。



一方、ペプシのCMを見ていると、「イチローのかっこよさ」に、
「惑わされて」買ってしまいそう、と言えなくもないですね
(この「惑わされて」というところが、前回の広告批判論につながるんですが)



ただ、ペプシのCMに引きつけられる消費者が、全く非合理かと言えばそうではありません。
おそらくコーラの消費者の大半は、ペプシコーラの製品情報を十分に持っていないでしょう。



そこで、ペプシは「メジャーなスポーツ選手に、高額の報酬を支払うことできる」会社
であることを消費者にアピール
します。



するとその広告を受け取った消費者は、
「間接的」にその製品は質が良い、という情報を受け取ることになります。


(つづく)







2014年2月12日水曜日

その広告、役に立つの? その1

実は賛否両論がある広告活動




独占的競争企業は、差別化された製品を生産するので、、
それぞれの企業は自社の製品に顧客を引き付けるために広告を行います。
ただし広告を行うことについては、経済学者の間で、昔から賛否両論の論争があります。



そこでしばらくは、「その広告、役に立つの? その1」と
銘打って広告の是非や役割について考えていきましょう。





Advertising / Wrote





批判的な意見と支持する意見





広告に批判的な人々からは次のような声が上がります。



  • 企業が広告を使って情報提供ではなく心理操作をし、潜在的な欲望を呼び起こす
  • 広告が製品を実物よりもより良いものに伝えようとするので、かえって競争を阻害する




一方、広告を支持する人たちの意見にはこんなものがあります。




  • 企業は広告を用いることによって、価格・新製品の発売・販売店などの情報を伝える
  • 広告による情報提供で社会に対し、資源をより効率的に配分できる
  • 広告は顧客を引きつけ、新たな企業を市場に参入させやすくする



広告が低価格を実現する事例




管理人自身、プロの経済学者ではありませんので、なんらかの根拠をもって
支持・不支持のいずれかの立場を取ることはできません。



ただし、次にあげるメガネに関する事例を見る限り、 広告は競争を
促進し、消費者に低価格をもたらす
ことが分かります。



1960年代のアメリカでは、いくつかの州ではメガネと検眼の広告が
各州法で禁止されていました。そこでリー・ベンハムという経済
各州法の違いに着目して、メガネの価格と、広告に関する一般的見解を示しました。


"広告を禁止した州では、眼鏡の平均価格は33ドルであった。(中略)一方、しなかった州では、平均価格は26ドルであった。このように広告は平均価格を20%以上も下落させた。眼鏡の市場や、またおそらく他の多くの市場でも、広告は競争を促進し、消費者に低価格をもたらすのである。"


(P509 「マンキュー経済学第2版Ⅰミクロ版」第17章独占的競争)


(つづく)


【参考文献】


マンキュー経済学〈1〉ミクロ編














2014年1月31日金曜日

企業と広告 独占的競争と完全競争の比較 その2

広告を出す企業と広告を出さない企業の違い




さて、前回の記事では、以下のコーラのCM(2本)と牛乳のCM(1本)では、
ミクロ経済学的に何が違うのか?という問いかけを行ってみました。







先に結論を言ってしまうと、こんなところです。


コーラのCMはそれぞれ民間企業が自社の費用として独自に作成している。
一方牛乳のCMは、社団法人中央酪農会議という酪農家の共同組織が作成して、
個々の酪農家が作成しているわけではない。つまり広告を出す主体が異なる。




Milk-Tasting Time / Joe Shlabotnik





広告への態度は市場構造の違いから生まれる





それでは、なぜこんな差が生じるのでしょうか?
それはコーラと牛乳の市場構造の違いから生じるためです。


コーラの市場構造(独占的競争の長期均衡)






牛乳の市場構造(完全競争の長期均衡)







2つの図で見るべきポイントは、限界収入と限界費用が交わる点です。
独占的競争市場であろうと完全競争市場であろうと、
生産量(販売量)は、限界収入と限界費用が交わる点で決まり、
価格はその生産量(販売量)によって決まります。




牛乳の広告は共同組織だけがまとめて出す





ただし独占的競争市場では、販売価格(需要曲線)は、
すでに限界収入を上回っているます。



提示した価格で追加的に販売できると、限界費用を上回る収入の増加が得られます。
このため、独占的競争市場にある企業は、その収入の増加を見越して積極的に
広告を出す
ことになります。



一方で完全競争市場では、販売価格は限界収入と等しく、限界費用と同じであるため
生産者が追加的に多く販売しても収入の増加は見込めません。
このため、完全競争市場にある企業は、広告を出そうとはしません。



それでも牛乳のCMは出ているじゃないかと、思われる方もいるでしょう。
しかし、これは特定の酪農家の牛乳を売るためではありません。



牛乳全体の消費底上げを狙った産業全体のCMであって、
一般社団法人中央酪農会議という共同組織としてCMを出しています。


(「企業が広告を出す理由 独占的競争と完全競争の比較 」シリーズ終わり)







2014年1月30日木曜日

企業と広告 独占的競争と完全競争の比較 その1

コーラと牛乳のCMは何が違うのか?


  • 街を歩けば看板が
  • テレビをつければCMが
  • Googleで検索すればキーワード広告が


私たちが日常生活をしていて、広告を見かけない日は、ほとんどありません。



あまりに広告があふれかえってしまっているため、
かえって広告の違いが、分かりにくくなってしまいます。



しかし、次に示すコーラCM(2本)と牛乳のCM(1本)では、
ミクロ経済学的に決定的な違いが存在します。


それはどこでしょうか?




コーラ2本と牛乳1本のCMについて



【コカ・コーラ ゼロ】 EXILE TVCM「Endless Crave」篇 60秒 Coca-Cola Zero 2013 TVCF





いいなCM pepsi NEX カバーシリーズ





3篇 牛乳に相談だ CM 2005-2007年 川島海荷 「キス」「チョーク」「ライオン」






ヒントとしては、独占的競争市場と完全競争市場の市場構造の違いがあげられます。
答えは次回のブログで!



Milk and cooky / Salim Virji




 (つづく)


2014年1月17日金曜日

「フツーの会社」がそこそこ儲かる理由 独占的競争市場の均衡 その2

独占的競争企業→独占利潤の出ない独占企業



前回独占的競争市場において、長期的に自由参入と自由退出
発生することを説明しました。図で表すとこんな感じです。



需要曲線が右シフト(利潤が多い場合)






需要曲線が左シフト(利潤が少ない場合)






図の需要曲線と限界収入が動いているのは、その独占的競争市場において、


  • 利潤が得られるとき→参入企業が増える→曲線が右シフトする
  • 損失を被っているとき→既存の企業が退出する→曲線が左シフトする


という理由があるためです。





Tsukiji Market / blprnt_van





利潤や損失が発生していても長期では均衡する






市場全体の利潤や損失で需要曲線や限界収入が、左右にシフトするわけですが、
最終的には、需要曲線が平均総費用のある一点に接することになります。



独占的競争市場の均衡









この状態が独占的競争市場における、均衡となります。






「そこそこ儲かる」の意味





この様子は、「独占利潤の出ない独占状態」とも呼ばれます。
確かに販売すればするほど、販売するほど、販売価格(需要曲線)と限界収入の



乖離がすすむため、独占利潤を得ているように見えます。
しかし、その販売価格は平均総費用と等しいため、利潤は発生しません。



もっとも、販売価格と平均総費用が出ていないからといって、
個別の企業で会計上の粗利益や営業利益が出ていないかといえば、
そうではありません。




ここでいう利潤とは、細かくいうと、超過利潤のことです。
使い方は、企業によって様々ですが
従業員に通常より多くの賃金を支払ったり、株主によりたくさんの
配当を行うための原資となったりするものです。



独占市場における企業が「儲かっている」ように見えるのは、
こういった超過利潤が発生するためです。



独占的競争市場が、「そこそこ儲けることができる」のは、
独占利潤は発生しないものの、均衡によって、企業が市場に出入りするためです。





「「フツーの会社」がそこそこ儲かる理由 独占的競争市場の均衡」シリーズ終わり)






2014年1月16日木曜日

「フツーの会社」がそこそこ儲かる理由 独占的競争市場の均衡 その1

均衡の考え方から独占的競争市場を考える




さて、経済学の重要な概念の1つに均衡というものがあります。


【均衡】


何か違うことをしてみても誰も自分の暮らしを改善できなくなった状況。
または需要と供給が等しくなった状態。


この概念に基づいて、独占的競争企業の短期利潤を見てみると、
均衡していない状態になります。


利潤を得ている独占的競争企業





損失を被っている独占的競争企業





ビジネスチャンス!が豊富な市場





均衡の含意は、独占的競争企業は短期的にとって、


  • 利潤が得ている
  • 損失を被っている


という状態になっても、自分の「暮らし向き」が変わる可能性があります。
商売っ気まんまんで、ポジティブな言い方をすると、
「ビジネスチャンスがある!」ということになりましょうか(笑)。




01 (161) / Victor1558





自由参入と自由退出がビジネスのカギ




で、その「ビジネスチャンスがある!」と言う状態を図で表すとこうなります。
これは独占的競争市場の性質の1つである、長期の自由参入と自由退出
特徴を捉えています。費用に関する曲線は、省略しています。



需要曲線が右シフト(利潤が多い場合)





需要曲線が左シフト(利潤が少ない場合)





(つづく)







2014年1月10日金曜日

独占的競争企業の短期利潤 その2

「フツーの会社」のもうけの構造



世の中のいわゆる「フツーの会社」が、「なんぼ儲かりまっか?」と聞かれて、
利潤を確定させようと思えば、ざっくりと次の3つの作業が必要となります。


  1. 価格を決める
  2. 販売(生産)数量を決める
  3. 費用を決めて収入と費用の差分を取る


価格と数量の決定は、最適生産量のルールというものがありますので
それを見て決定します。限界収入と限界費用が交差するところで決まっちゃいます。
ここまでは前回も説明しましたが、問題は費用をどう取るか?ということです。




lr-processed-0399 / itsmeritesh





世間一般でいうコストとは平均総費用のこと





このときの費用とは、平均総費用というのものを取ります。
限界費用とごっちゃになりそうですが、両者はまったく違います。
(その辺の詳しいところはここらで説明)



その平均総費用曲線を記入すれば、下記の図のようになります。



利潤を得ている独占的競争企業





なんかヘンテコなU字型の曲線が登場していますね。
でも、需要曲線(価格)の方が、費用よりも上回っているので、
これで利潤が出ている状態です。
(平均総費用曲線がヘンテコなU字型の曲線になる理由はコチラ)




コストが収入を上回れば損失(当たり前の話)





当然、需要曲線(価格)よりも費用の方が上回ってしまうと
損失が生じます。その損失が出ている状態を、表すとこの図の通りになります↓



損失を被っている独占的競争企業





’「独占的競争市場の短期利潤」シリーズ終わり)





2014年1月9日木曜日

独占的競争企業の短期利潤 その1

商売の豆知識 最適生産量ルールと平均総費用




前回のシリーズでは、こんな感じ↓で独占的競争市場
需要曲線と限界収入曲線を説明しました。



独占的競争市場の需要曲線と限界収入





※青色が需要曲線で水色が限界収入曲線



需要曲線と限界収入の差が、独占的競争市場の
独占利潤が発生する理由ですが、これだけでは利潤は確定できません。



なぜなら、この図には費用曲線が書かれておらず、
どれぐらい生産するのか、分からないからです。
それにしても、いかほど作れば良いのでしょうかね~?




Pounds Payment / .v1ctor Casale.





最適生産量のルール 限界収入= 限界費用





いかほど作れば良いかという問いには、完全競争市場の最適生産量のルール
そのまま当てはめれば良いだけです。



  • 限界収入 = 限界費用



図で言えばこのように、限界収入曲線MRと限界費用曲線MCが交差する生産量で、
利潤最大化生産量とも言います。


マンツーマントレーニングの最適数量






「儲かりまっか?」→平均総費用はいくらかかりますか?





これで「いかほど作るべきか?」は決定しました。
で、あとはそんだけつくったら「なんぼ儲かりまっか?」という話です。



「なんぼ儲かりまっか?」とはすなわち利潤のことですが、
これは限界でもって差し引きするのではなく、そのときの平均総費用で計算します。



(つづく)







2014年1月4日土曜日

「フツーの企業」はもうかるか? 独占的競争の収入 その2

それなりにもうかるけど超過利潤は出ないよ




前回(リンク)独占的競争市場に、「フツーの会社」が地道に汗臭い作業を経て、
製品差別化をする理由について、図を描いて、他の市場構造と比較することで
求めようとしました。



完全競争市場の需要曲線と限界収入





独占市場の需要曲線と限界収入





独占的競争市場の需要曲線と限界収入







これらを見ると、見た目の感じとして、次のような疑問が思いつきますね~。




  1. 完全競争市場と、独占市場・独占的競争市場は線の傾きからして違う!
  2. 独占市場と独占的競争市場は、同一なのか?




完全競争市場と、独占市場・独占的競争市場は線の傾きからして違う!





まあ、これは独占市場・独占的競争市場が、どうやらこうやらというよりは、
完全競争市場のお約束ごとですね。



  • 販売価格(需要曲線)と限界収入は常に等しい
  • いくら生産しようが、市場価格(限界収入)は全く同じ




市場で売れる価格と、もう一個余計に売って追加的に得られる収入の
差がゼロなので、利潤は全く出ません。
(といっても会計的に粗利益や営業利益が出ないというわけではない)



それに対して、独占市場・独占的競争市場は、作れば作るほど、
販売価格と限界収入の差が広くなるのでそれだけ利潤も出て、
「おいしい商売」とも言えます。




独占市場と独占的競争市場は、同一なのか?





う~ん。これらを見た限り、両者はおんなじですね。
ただし、「短期的には」という条件が付きです。
「長期的には」独占的競争市場では、販売価格(需要曲線)と限界収入が、
移動するので、両者は同一ではありません。



需要曲線が右シフト(利潤が多い場合)







需要曲線が左シフト(利潤が少ない場合)









独占的市場では、独占市場のように参入企業が、固定されているわけではありません。
長期的に見れば、利潤の多寡によって、企業が参入したり、退出したりするので、
独占的競争市場の企業は、「独占利潤のない独占企業」のようになります。



で、タイトルにある「フツーの企業はもうかるか?」ということです。
まあ、独占利潤が出てウハウハもうかるということはないと思いますが、
やり方次第で、粗利や営業利益は、それなりに出ることは、
可能なんではないでしょうか?そんな結論になります。



(『フツーの企業」はもうかるか? 独占的競争の利潤』シリーズおわり)
















2014年1月3日金曜日

「フツーの企業」はもうかるか? 独占的競争の利潤 その1

じぶんとこで好きな値段を決めるためには…




今まで(リンク)、独占的競争市場では、
製品差別化が重要なポイントですよ~」と述べてきました。
それができれば、企業はある程度自由に価格を決められるからです。



とはいっても、実際、現実の世界で製品差別化をして、
よその企業より高い価格で販売をしようと思えば、



  • 営業
  • 広告・宣伝
  • マーケティング
  • 品質改善
  • SEO検索


…etc


など、消費者に認めてもらうための、ネバーエンディングな作業が必要になります。
世の中のたいがいの会社(企業)は、これらを無限に組み合わせて、
事業活動を行っているわけです。





Endless Candy / *PaysImaginaire*






需要曲線で3つの市場を比較





と、「フツーの会社」が地道に汗臭い作業を経て、製品差別化をする理由について、
文章で説明していてもラチがあかないよう気がします。



他の市場における需要曲線と比較してみましょう。
比較の対象は、完全競争市場と独占市場です。



完全競争市場の需要曲線と限界収入





独占市場の需要曲線と限界収入





独占的競争市場の需要曲線と限界収入







似ているところもあるし、全然違うところもあるし






どうでしょうか?見た目の感じとして
次のようなことを感じられたのではないでしょうか?



  1. 完全競争市場と、独占市場・独占的競争市場は線の傾きからして違う!
  2. 独占市場と独占的競争市場は、同一なのか?



次回ではこれらの疑問について詳しく考察していきましょう。


(つづく)



























2014年1月2日木曜日

独占的競争でも製品差別化 その2

製品差別化で消費者の便益が向上



前回、独占的競争の製品差別化ということで、
コンビニ大手3社のコーポレートカラーを比較してみました。




これらはWebサイトですが、コンビニが密集している地域でも
それぞれが見分けられるよう、色の組み合わせが異なっていますね。
こういうのが、製品差別化と言います。





東山のセブンイレブン / casek





コンビニカフェに見る製品差別化





製品差別化についてもう少し詳しく定義すると、次の3つの形態が存在します。



  1. スタイルやタイプの差別化
  2. 立地の差別化
  3. 質の差別化



1.はローソンなんかが顕著ですね。コンビニは、365日24時間を売りをしている
はずなのに、「100円均一」をテーマにしてます。「100円でこんなものが買えるコンビニ」
という多様性を消費者に訴えかけています。



2.はファミマのエキナカ事業で見られます。清涼飲料水やおにぎり、惣菜パンなど
扱っている商品そのものはほとんど同じです。
通勤の途中などで買えるエキナカのコンビニには、住宅地に出店する店とはまたことなる
利便性を感じさせてくれます。


3.もローソンのマチカフェを見ていると分かります。
セブンイレブンのコーヒーが100円なのに対して、ローソンでは高級路線で
180円にしているらしいです。
(すんません。どっちもまだ飲んだことがないので、コーヒー自体の説明はしません)



このように多様な質の製品が手に入るようになることは、
消費者は大変、有益です。



多様な質の製品が手に入るようになり、
不必要に高品質な製品を高い値段で買わされたり、
不満の残る低品質の製品で、我慢せざるを得ないことは、少なくなります




(「独占的競争でも製品差別化」シリーズ終わり)