おちゃらけミクロ経済学: 自由参入と自由退出
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2014年1月17日金曜日

「フツーの会社」がそこそこ儲かる理由 独占的競争市場の均衡 その2

独占的競争企業→独占利潤の出ない独占企業



前回独占的競争市場において、長期的に自由参入と自由退出
発生することを説明しました。図で表すとこんな感じです。



需要曲線が右シフト(利潤が多い場合)






需要曲線が左シフト(利潤が少ない場合)






図の需要曲線と限界収入が動いているのは、その独占的競争市場において、


  • 利潤が得られるとき→参入企業が増える→曲線が右シフトする
  • 損失を被っているとき→既存の企業が退出する→曲線が左シフトする


という理由があるためです。





Tsukiji Market / blprnt_van





利潤や損失が発生していても長期では均衡する






市場全体の利潤や損失で需要曲線や限界収入が、左右にシフトするわけですが、
最終的には、需要曲線が平均総費用のある一点に接することになります。



独占的競争市場の均衡









この状態が独占的競争市場における、均衡となります。






「そこそこ儲かる」の意味





この様子は、「独占利潤の出ない独占状態」とも呼ばれます。
確かに販売すればするほど、販売するほど、販売価格(需要曲線)と限界収入の



乖離がすすむため、独占利潤を得ているように見えます。
しかし、その販売価格は平均総費用と等しいため、利潤は発生しません。



もっとも、販売価格と平均総費用が出ていないからといって、
個別の企業で会計上の粗利益や営業利益が出ていないかといえば、
そうではありません。




ここでいう利潤とは、細かくいうと、超過利潤のことです。
使い方は、企業によって様々ですが
従業員に通常より多くの賃金を支払ったり、株主によりたくさんの
配当を行うための原資となったりするものです。



独占市場における企業が「儲かっている」ように見えるのは、
こういった超過利潤が発生するためです。



独占的競争市場が、「そこそこ儲けることができる」のは、
独占利潤は発生しないものの、均衡によって、企業が市場に出入りするためです。





「「フツーの会社」がそこそこ儲かる理由 独占的競争市場の均衡」シリーズ終わり)






2014年1月16日木曜日

「フツーの会社」がそこそこ儲かる理由 独占的競争市場の均衡 その1

均衡の考え方から独占的競争市場を考える




さて、経済学の重要な概念の1つに均衡というものがあります。


【均衡】


何か違うことをしてみても誰も自分の暮らしを改善できなくなった状況。
または需要と供給が等しくなった状態。


この概念に基づいて、独占的競争企業の短期利潤を見てみると、
均衡していない状態になります。


利潤を得ている独占的競争企業





損失を被っている独占的競争企業





ビジネスチャンス!が豊富な市場





均衡の含意は、独占的競争企業は短期的にとって、


  • 利潤が得ている
  • 損失を被っている


という状態になっても、自分の「暮らし向き」が変わる可能性があります。
商売っ気まんまんで、ポジティブな言い方をすると、
「ビジネスチャンスがある!」ということになりましょうか(笑)。




01 (161) / Victor1558





自由参入と自由退出がビジネスのカギ




で、その「ビジネスチャンスがある!」と言う状態を図で表すとこうなります。
これは独占的競争市場の性質の1つである、長期の自由参入と自由退出
特徴を捉えています。費用に関する曲線は、省略しています。



需要曲線が右シフト(利潤が多い場合)





需要曲線が左シフト(利潤が少ない場合)





(つづく)







2013年2月20日水曜日

完全競争市場 自由参入と自由退出 その3

短期は「不自然」、長期は「自然」




前回のブログでは時間の観点から、短期長期市場供給曲線の特徴について述べました。
ここで2つの供給曲線を合わせて、特徴を比較をしてみましょう。



短期と長期の供給曲線






  • 短期→傾きが大きい→生産量の伸びに対して価格の上昇幅が大きい
  • 長期→傾きが小さい→生産量の伸びに対して価格の上昇幅が小さい


つまり、自由参入と自由退出の性質を備えた完全競争市場では、
時間の経過とともに、財・サービスの生産量が、伸縮しやすくなるとも言えます。




雪のため通行止め Road Closed Due to Heavy Snow / Yuya Sekiguchi



参入規制は供給の硬直化をもたらす




前々回のブログでは、参入規制の観点から「参入規制あり」
「参入規制なし」市場供給曲線の特徴について述べました。
ここでも2つの供給曲線を合わせて、特徴を比較をしてみましょう。




参入規制ありと参入規制なしの供給曲線





  • 「参入規制あり」→傾きが大きい→生産量の伸びに対して価格の上昇幅が大きい
  • 「参入規制なし」→傾きが小さい→生産量の伸びに対して価格の上昇幅が小さい


つまり、自由参入と自由退出の性質を備えた完全競争市場では、
参入規制の有無で、財・サービスの生産量の伸縮が変わると言えます。



「不自然な状態」と「自然な状態」




前々回前回のブログと合わせると、管理人は次のような印象を感じます。
ここから下の記述は、標準的なテキストには載っていない、管理人独自の考えです。



  • 短期=「参入規制あり」「不自然」
  • 長期=「参入規制なし」「自然」



短期と言われるのは、設備などの固定費用が、文字通り「固定化」されるためですが、
実際には、商売を2年3年と続けていくと、設備も可変費用として「変動化」します。



いつまでも使えない設備を据え置きのまま、というのは、ちょっと考えづらいです…。
「商売あがったり」になるのは目に見えています。使えない設備を据え置きにしておく
ような事業は、撤退するだろうし。



そういわけなんで「設備の固定化」で、短期=「参入規制あり」という状態は、
非常に「不自然」に見えるわけです。もっとも、パソコンのモデルチェンジのように
「半年」ぐらいの期間であれば、それは短期のような気もしますが。
(完全競争市場 自由参入と自由退出シリーズ終わり」)





【参考文献】


八田達夫
ミクロ経済学〈1〉市場の失敗と政府の失敗への対策 (プログレッシブ経済学シリーズ)ミクロ経済学〈1〉市場の失敗と政府の失敗への対策 (プログレッシブ経済学シリーズ)
東洋経済新報社


ミクロ経済学〈1〉市場の失敗と政府の失敗への対策 (プログレッシブ経済学シリーズ)





2013年2月19日火曜日

完全競争市場 自由参入と自由退出 その2

短期と長期の供給曲線




前回のブログでは、完全競争市場において、自由参入と自由退出の特徴が備わっている
理由を考えてみました。今回は、その自由参入と自由退出を前提として、時間の経過による
産業全体の供給曲線を考えていきましょう。



産業全体の供給曲線を時間の経過で区別することは、
一般的にも使われる、「需要と供給の法則」を理解するために、非常に大切な概念となります。
なお、ここでいう時間の経過とは、短期長期の、2つの時間で表すことにします。




市場

Market in Tripoli / David Stanley


短期の供給曲線




短期の供給曲線には、2つの特徴があります。

  1. 固定費用を調整できない
  2. 固定費用が調整できないため、企業数が一定に限られる

個々の企業の供給と、市場全体の供給を合計したものを比べると、次のグラフのようになります。



短期の供給曲線



短期の供給曲線




短期完全競争市場において、個々の企業は限界費用と市場価格が、
等しくなるように生産するので、価格が上昇すれば、個々の企業は、生産量を増加させます。



短期では、市場において企業数が一定に限られています。そのため、
仮に市場全体の企業が1,000社あるとすれば、個々の企業の1,000倍の供給曲線となります。



長期の供給曲線




一方、長期の供給曲線には、2つの特徴があります。

  1. 固定費用が調整できる
  2. 固定費用が調整できるため、企業数が変化する


個々の企業の供給と市場全体の供給を合計したものを比べると、次のグラフのようになります。




長期の供給曲線



長期の供給曲線




長期完全競争市場では、個々の企業は、利潤がゼロになるまで市場に参入したり、
退出したりします。そのため、市場全体の価格は、平均総費用の最小値に等しくなります。



仮に1,000社の企業があったとしてもどの企業も、価格は最小平均総費用に等しくなるので、
右側の市場供給のグラフでは、供給曲線は水平となります。




実際には右上がりの長期の供給曲線




このように長期の供給曲線は、水平になりますが、実際には下のグラフのように
若干、右上がりになります。確かに、多くの財やサービスは、市場価格で
消費者が要求するだけの量を、同じ価格で作ることができます。



しかしリゾートホテルのような、「土地」という限られた資源を投入する財の場合、
資源の獲得競争が発生し、資源が高騰するような財も存在するため、
実際には右上がりの供給曲線になると考えられます。



長期の供給曲線(修正)



長期の供給曲線(修正)



(つづく)






2013年2月18日月曜日

完全競争市場 自由参入と自由退出 その1

自由参入と自由退出の理由



これまでのブログ、




の各シリーズでは、完全競争市場の特徴について述べてきました。
その完全競争市場の特徴とは、以下の通りです。


  1. 価格受容・・・取引に参加する人は自らの売買行動で価格変動を起こすことはできない
  2. 標準的製品・・・取引に参加する財やサービスは需要者からみて差異がない
  3. 情報の対称性・・・取引参加者は取引される財やサービスについての情報を等しく有する


今回は、これら3つの特徴に加えて、完全競争市場のもうひとつの特徴である、
自由参入と自由退出について考えてみましょう。




市場

Market / chany14





自由参入と自由退出の本当の理由




自由参入と自由退出とは、ある生産者が他の生産者を産業から、
人為的に排除することを不可能にすることです。



別の言いかたをすると、個別の企業が市場に参入したり、退出したりすることを、
「放ったらかし」にするということです。



ではなぜ、個別企業が、参入・退出を「放ったらかし」にしておくのでしょうか?
よく、「参入規制の撤廃によって既得権益の打破!」のためと、
難しい言葉を使われることがあります。しかし、これは本質的な答えになっていません。



市場に参入規制を設けない本質的な理由とは、社会全体の余剰が増加するためです。
その理由をイメージで、表現してみましょう。




参入規制がある場合の非弾力的な供給



参入規制がある場合の非弾力的な供給



価格が変化しても供給量はあまり変わらない。供給が非弾力的。



参入規制がない場合の弾力的な供給



参入規制がない場合の弾力的な供給



価格が変化すると供給量が大きく変化する。供給が弾力的。



「得」が「損」を上回る




社会全体の余剰の増加は、参入規制を撤廃すると、得をした経済主体が、
参入規制の利益を失った生産者に対して、補償をしても、まだ余りが出る
ことになります。



市場への参入規制を緩和したり、自由な参入が行われたりすると価格が下がります。
「放ったらかし」が望ましいのは、それに加えて、既存の生産者が被る損よりも、
社会全体に発生する得が大きい
からだと言えます。
(つづく)





【参考文献】


八田達夫
ミクロ経済学〈1〉市場の失敗と政府の失敗への対策 (プログレッシブ経済学シリーズ)ミクロ経済学〈1〉市場の失敗と政府の失敗への対策 (プログレッシブ経済学シリーズ)
東洋経済新報社


ミクロ経済学〈1〉市場の失敗と政府の失敗への対策 (プログレッシブ経済学シリーズ)



2013年2月9日土曜日

完全競争市場 ちょっと寄り道

「完全競争市場」につっこみ



「完全競争市場 価格はきめられるか」シリーズ
「完全競争市場 利潤のための意思決定」シリーズでは、


  • 市場価格・限界収入・限界費用
  • 損益分岐価格
  • 操業停止価格


について、それぞれ説明を述べてきました。ここまでくると、


  • 企業の短期供給曲線
  • 企業の長期供給曲線


の概念を用いて、市場はなぜ均衡するのか?についての説明が可能となります。
つまりいわゆる「需要と供給の法則」で、両者はなぜ一致するのかが分かるようになります。



しかし我ながらブログを書いていて、完全競争という言葉そのものや、
その考え方に「つっこみ」を入れたくなってきました。ここからしばらくは、
ミクロ経済学の標準テキストには、載っていないような「脱線」になります。




マラソン競争

東京マラソン2011 / Kentaro Ohno



つっこみその1 「完全競争」は「競争」をしていない!?




ミクロ経済学の教科書を読むと完全競争市場の定義は、概ね次のようなものです。


  • 価格受容・・・取引に参加する人は自らの売買行動で価格変動を起こすことはできない
  • 標準的製品・・・取引に参加する財やサービスは需要者からみて差異がない
  • 情報の対称性・・・取引参加者は取引される財やサービスについての情報を等しく有する
  • 自由参入と自由退出・・・新規企業の参入や既存企業の退出は自由である


一般的に「競争的」と聞いてイメージするのは、家電量販店の値下げ合戦や、
会社同士のプレゼン競合など個々の企業が、「しのぎを削っている」
イメージがあるかもしれません。



しかし完全競争市場において、個々の企業は、供給する財やサービスは、
全て、同じものとされ、「競争」をする余地は残っていないのです
(市場に「参入するか退出するか」の選択権は与えられているが、競争そのものではない)。



要するに、ミクロ経済学の完全競争市場とは、一般的に競争的と呼ばれる状態ではなく、
企業は価格という情報に基づいて、受動的に行動させられているだけのです。




つっこみその2 仮定が多すぎる!




現実の世界で、完全競争市場として存在するのは、株式市場や穀物市場のような市場です。
これらは、売り手も買い手も、いわばプロフェッショナルが集まる、ごく限られた市場です。



プロの市場は、それでいいのですが、管理人が実際に生活する空間では、
取引される財やサービスについて、売り手も買い手も知り尽くしているものは、
ほとんど存在しない、と感じています。



要するに、完全競争市場という考え方は、
前提となる仮定があれこれ多すぎて、「それで結局どうしろ?」という思いに陥るのです。
(つづく)




【参考文献】


フリードリヒ・ハイエク 市場・知識・自由―自由主義の経済思想市場・知識・自由―自由主義の経済思想 ミネルヴァ書房



市場・知識・自由―自由主義の経済思想