短期と長期の供給曲線
前回のブログでは、完全競争市場において、自由参入と自由退出の特徴が備わっている
理由を考えてみました。今回は、その自由参入と自由退出を前提として、時間の経過による
産業全体の供給曲線を考えていきましょう。
産業全体の供給曲線を時間の経過で区別することは、
一般的にも使われる、「需要と供給の法則」を理解するために、非常に大切な概念となります。
なお、ここでいう時間の経過とは、短期と長期の、2つの時間で表すことにします。
Market in Tripoli / David Stanley
短期の供給曲線
短期の供給曲線には、2つの特徴があります。
- 固定費用を調整できない
- 固定費用が調整できないため、企業数が一定に限られる
個々の企業の供給と、市場全体の供給を合計したものを比べると、次のグラフのようになります。
短期の供給曲線
短期の完全競争市場において、個々の企業は限界費用と市場価格が、
等しくなるように生産するので、価格が上昇すれば、個々の企業は、生産量を増加させます。
短期では、市場において企業数が一定に限られています。そのため、
仮に市場全体の企業が1,000社あるとすれば、個々の企業の1,000倍の供給曲線となります。
長期の供給曲線
一方、長期の供給曲線には、2つの特徴があります。
- 固定費用が調整できる
- 固定費用が調整できるため、企業数が変化する
個々の企業の供給と市場全体の供給を合計したものを比べると、次のグラフのようになります。
長期の供給曲線
長期の完全競争市場では、個々の企業は、利潤がゼロになるまで市場に参入したり、
退出したりします。そのため、市場全体の価格は、平均総費用の最小値に等しくなります。
仮に1,000社の企業があったとしてもどの企業も、価格は最小平均総費用に等しくなるので、
右側の市場供給のグラフでは、供給曲線は水平となります。
実際には右上がりの長期の供給曲線
このように長期の供給曲線は、水平になりますが、実際には下のグラフのように
若干、右上がりになります。確かに、多くの財やサービスは、市場価格で
消費者が要求するだけの量を、同じ価格で作ることができます。
しかしリゾートホテルのような、「土地」という限られた資源を投入する財の場合、
資源の獲得競争が発生し、資源が高騰するような財も存在するため、
実際には右上がりの供給曲線になると考えられます。
長期の供給曲線(修正)
(つづく)
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