自由参入と自由退出の理由
これまでのブログ、
の各シリーズでは、完全競争市場の特徴について述べてきました。
その完全競争市場の特徴とは、以下の通りです。
- 価格受容・・・取引に参加する人は自らの売買行動で価格変動を起こすことはできない
- 標準的製品・・・取引に参加する財やサービスは需要者からみて差異がない
- 情報の対称性・・・取引参加者は取引される財やサービスについての情報を等しく有する
今回は、これら3つの特徴に加えて、完全競争市場のもうひとつの特徴である、
自由参入と自由退出について考えてみましょう。
Market / chany14
自由参入と自由退出の本当の理由
自由参入と自由退出とは、ある生産者が他の生産者を産業から、
人為的に排除することを不可能にすることです。
別の言いかたをすると、個別の企業が市場に参入したり、退出したりすることを、
「放ったらかし」にするということです。
ではなぜ、個別企業が、参入・退出を「放ったらかし」にしておくのでしょうか?
よく、「参入規制の撤廃によって既得権益の打破!」のためと、
難しい言葉を使われることがあります。しかし、これは本質的な答えになっていません。
市場に参入規制を設けない本質的な理由とは、社会全体の余剰が増加するためです。
その理由をイメージで、表現してみましょう。
参入規制がある場合の非弾力的な供給
価格が変化しても供給量はあまり変わらない。供給が非弾力的。
参入規制がない場合の弾力的な供給
価格が変化すると供給量が大きく変化する。供給が弾力的。
「得」が「損」を上回る
社会全体の余剰の増加は、参入規制を撤廃すると、得をした経済主体が、
参入規制の利益を失った生産者に対して、補償をしても、まだ余りが出ることになります。
市場への参入規制を緩和したり、自由な参入が行われたりすると価格が下がります。
「放ったらかし」が望ましいのは、それに加えて、既存の生産者が被る損よりも、
社会全体に発生する得が大きいからだと言えます。
(つづく)
【参考文献】
八田達夫
ミクロ経済学〈1〉市場の失敗と政府の失敗への対策 (プログレッシブ経済学シリーズ)
東洋経済新報社
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