経済学における損益分岐価格について
前回のブログでは、完全競争市場における企業が、利潤を最大化させるための、
最適生産量ルールについて述べました。そのルールとは次の通りです。
- 限界便益(限界収入)(MR) が、 限界費用(MC)と等しくなるまで生産する
- 限界便益(限界収入)(MR)と限界費用(MC)は市場価格(P)と等しくする
価格受容型企業の利潤最大化生産量
見るべきポイントは、最適点としているところです。
最適点とは平行な直線(P=MR)とU字型の曲線(MC)が交わっている点です。
この点は、「最適生産量ルールのその2」を表している点となります。
最適生産量ルールだけでなく費用もお忘れなく
それでは、企業はこの最適点を生産するだけで、良いのでしょうか?
確かに、この最適点までつくることができれば、完全競争企業は、利潤を最大化できるでしょう。
ですが、この視点だけでは、企業は生産の意思決定をできません。
なぜなら、最適生産量ルールだけでは、「どれぐらいの量を生産すべきか」は分かっても、
「そもそも生産をすべきかどうか」、という問題については考慮されていないからです。
この生産すべきかどうかという問題に答えるためには、
利潤最大化と費用その7で登場した、平均総費用の概念を用いることが有効です。
「概念」という言葉を使うと、大層に聞こえるかもしれません。
要は「利潤 = 収入 - 費用」という計算式を成立させるために、
総費用が、総収入より少なくて済むか、ということを考えればよいのです。
- 総収入(TR) > 総費用(TC)→企業は利潤を得る
- 総収入(TR) = 総費用(TC)→企業の利潤はゼロ
- 総収入(TR) < 総費用(TC)→企業は損失を被る
Business Neworking Presentation, Paris / alexdecarvalho
「生産物1個当たり」という考え方と損益分岐価格について
ところで、「利潤 = 収入 - 費用」という考え方は、分母に生産量(Q)を置くことで、
生産物1個当たりの利潤を表すことも可能です。
- 利潤/Q = 総収入(TR)/Q - 総費用(TC)/Q
この式は、総収入(TR)/Q は市場価格(P)であり、総費用(TC)/Q は平均総費用で
あることも表すので、
- 市場価格(P) > 平均総費用(ATC)→企業は利潤を得る
- 市場価格(P) = 平均総費用(ATC)→企業の利潤はゼロ
- 市場価格(P) < 平均総費用(ATC)→企業は損失を被る
ということにもなります。このうち、市場価格(P) = 平均総費用(ATC)のとき、
その価格は、損益分岐価格と言われています。
言葉だけで理解するのは難しいと思います。
次回の「完全競争 利潤と意思決定シリーズ」で、図表を交えて、説明していきましょう。
(「完全競争市場 価格は決められるかシリーズ」おわり)
【関連エントリ】
利潤最大化と費用その7
利潤最大化と費用その6
利潤最大化と費用その5
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