「完全競争市場」につっこみ
「完全競争市場 価格はきめられるか」シリーズと
「完全競争市場 利潤のための意思決定」シリーズでは、
- 市場価格・限界収入・限界費用
- 損益分岐価格
- 操業停止価格
について、それぞれ説明を述べてきました。ここまでくると、
- 企業の短期供給曲線
- 企業の長期供給曲線
の概念を用いて、市場はなぜ均衡するのか?についての説明が可能となります。
つまりいわゆる「需要と供給の法則」で、両者はなぜ一致するのかが分かるようになります。
しかし我ながらブログを書いていて、完全競争という言葉そのものや、
その考え方に「つっこみ」を入れたくなってきました。ここからしばらくは、
ミクロ経済学の標準テキストには、載っていないような「脱線」になります。
東京マラソン2011 / Kentaro Ohno
つっこみその1 「完全競争」は「競争」をしていない!?
ミクロ経済学の教科書を読むと完全競争市場の定義は、概ね次のようなものです。
- 価格受容・・・取引に参加する人は自らの売買行動で価格変動を起こすことはできない
- 標準的製品・・・取引に参加する財やサービスは需要者からみて差異がない
- 情報の対称性・・・取引参加者は取引される財やサービスについての情報を等しく有する
- 自由参入と自由退出・・・新規企業の参入や既存企業の退出は自由である
一般的に「競争的」と聞いてイメージするのは、家電量販店の値下げ合戦や、
会社同士のプレゼン競合など個々の企業が、「しのぎを削っている」
イメージがあるかもしれません。
しかし完全競争市場において、個々の企業は、供給する財やサービスは、
全て、同じものとされ、「競争」をする余地は残っていないのです
(市場に「参入するか退出するか」の選択権は与えられているが、競争そのものではない)。
要するに、ミクロ経済学の完全競争市場とは、一般的に競争的と呼ばれる状態ではなく、
企業は価格という情報に基づいて、受動的に行動させられているだけのです。
つっこみその2 仮定が多すぎる!
現実の世界で、完全競争市場として存在するのは、株式市場や穀物市場のような市場です。
これらは、売り手も買い手も、いわばプロフェッショナルが集まる、ごく限られた市場です。
プロの市場は、それでいいのですが、管理人が実際に生活する空間では、
取引される財やサービスについて、売り手も買い手も知り尽くしているものは、
ほとんど存在しない、と感じています。
要するに、完全競争市場という考え方は、
前提となる仮定があれこれ多すぎて、「それで結局どうしろ?」という思いに陥るのです。
(つづく)
【参考文献】
フリードリヒ・ハイエク 市場・知識・自由―自由主義の経済思想 ミネルヴァ書房
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