フリードリヒ・ハイエクと「完全競争市場」
前回のブログでミクロ経済学の重要概念の一つである、完全競争市場に
個人的な「つっこみ」を入れてみました。「つっこみ」の内容は以下のとおりです。
- 完全競争市場という割には「競争」の余地など存在しない
- 完全競争市場という考え方には仮定が多く「浮世離れ」している
大学の経済学部卒でもない(もちろん大学院の経済学研究科修了でもない)、
管理人が、あえて重要概念に「つっこみ」を入れたのは、
「タネ本」を仕入れることができたからです。
そのタネ本というのは、参考文献にもあげた、フリードリヒ・ハイエクの
市場・知識・自由―自由主義の経済思想というタイトルの本です。
このうち「第三章 競争の性質」を読むと、管理人の「つっこみ」に対して、
ハイエクは、答えを用意してくれています。
ウィーン市内 / PlatonM
「競争」の意味~学問的な意味と一般的な意味
ハイエクによると、ミクロ経済学で使われている「競争」と、一般的に使われている「競争」は
まったく違うということを主張しています。
"(スーパーマーケット・旅行代理店・弁護士のように日常の諸問題を解決してくれる)これらの領域における競争が不完全と名づけられる理由は、実際、右の人びと(スーパーマーケット・旅行代理店・弁護士など)の活動の競争的性格と何の関係もない"
(P85 「第三章 競争の意味」)
さらに、同じく第三章の後段を読むと、経済学者が、完全競争市場の理論を成立させるために、
現実の財やサービスを、「規格化」してしまうようなことを、厳に戒めています(P87)。
「完全競争市場」の理論の存在理由
それでは、ミクロ経済学において、完全競争市場の理論は何のために存在するのでしょうか?
その理由を本書に求めると、次の3つくらいにまとめられます。
- 「完全競争市場」をモデルとするため
- 食料品や法律サービスのような「不完全な競争市場」と比較するため
- 「不完全競争市場」を「完全競争市場」に近づけるため
別の言い方をすると、完全競争市場は、需要者(消費者が)より良い財やサービスを、
より安く消費するために、価格という情報を形成するために存在している、と言いたいのです。
ハイエクは、市場における需要と供給の関係において、需要側の立場で物事を考えています。
現実世界では、それほど多くは存在しない、完全競争市場の理論が、
やはり有効であると、ハイエクが考えるのは次の引用文に象徴されています。
"競争は本質的に意見の形成の過程である。(中略)競争は、何がもっとも安いかについて、人びとがもつ見方を創り出す"
(P99 「第三章 競争の意味」)
(「完全競争市場 もうちょっと寄り道」おわり)
【参考文献】
フリードリヒ・ハイエク 市場・知識・自由―自由主義の経済思想 ミネルヴァ書房
ジェームズ・スロウィッキー 「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)
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