おちゃらけミクロ経済学: 完全競争市場 もうちょっと寄り道

2013年2月11日月曜日

完全競争市場 もうちょっと寄り道

フリードリヒ・ハイエクと「完全競争市場」




前回のブログでミクロ経済学の重要概念の一つである、完全競争市場
個人的な「つっこみ」を入れてみました。「つっこみ」の内容は以下のとおりです。


  • 完全競争市場という割には「競争」の余地など存在しない
  • 完全競争市場という考え方には仮定が多く「浮世離れ」している


大学の経済学部卒でもない(もちろん大学院の経済学研究科修了でもない)、
管理人が、あえて重要概念に「つっこみ」を入れたのは、
「タネ本」を仕入れることができたからです。



そのタネ本というのは、参考文献にもあげた、フリードリヒ・ハイエク
市場・知識・自由―自由主義の経済思想というタイトルの本です。
このうち「第三章 競争の性質」を読むと、管理人の「つっこみ」に対して、
ハイエクは、答えを用意してくれています。






ウィーン市内 / PlatonM




「競争」の意味~学問的な意味と一般的な意味




ハイエクによると、ミクロ経済学で使われている「競争」と、一般的に使われている「競争」
まったく違うということを主張しています。



"(スーパーマーケット・旅行代理店・弁護士のように日常の諸問題を解決してくれる)これらの領域における競争が不完全と名づけられる理由は、実際、右の人びと(スーパーマーケット・旅行代理店・弁護士など)の活動の競争的性格と何の関係もない"
(P85 「第三章 競争の意味」)



さらに、同じく第三章の後段を読むと、経済学者が、完全競争市場の理論を成立させるために、
現実の財やサービスを、「規格化」してしまうようなことを、厳に戒めています(P87)。



「完全競争市場」の理論の存在理由




それでは、ミクロ経済学において、完全競争市場の理論は何のために存在するのでしょうか?
その理由を本書に求めると、次の3つくらいにまとめられます。


  • 「完全競争市場」をモデルとするため
  • 食料品や法律サービスのような「不完全な競争市場」と比較するため
  • 「不完全競争市場」を「完全競争市場」に近づけるため


別の言い方をすると、完全競争市場は、需要者(消費者が)より良い財やサービスを、
より安く消費するために、価格という情報を形成するために存在している、と言いたいのです。
ハイエクは、市場における需要と供給の関係において、需要側の立場で物事を考えています。



現実世界では、それほど多くは存在しない、完全競争市場の理論が、
やはり有効であると、ハイエクが考えるのは次の引用文に象徴されています。


"競争は本質的に意見の形成の過程である。(中略)競争は、何がもっとも安いかについて、人びとがもつ見方を創り出す"

(P99 「第三章 競争の意味」)


(「完全競争市場 もうちょっと寄り道」おわり)


【参考文献】




フリードリヒ・ハイエク 市場・知識・自由―自由主義の経済思想市場・知識・自由―自由主義の経済思想 ミネルヴァ書房



市場・知識・自由―自由主義の経済思想




ジェームズ・スロウィッキー 「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)



「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)







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