おちゃらけミクロ経済学: 規模の経済
ラベル 規模の経済 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 規模の経済 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2013年6月3日月曜日

独占とは その2 

独占はなぜ生じるのか?




【独占】
ある企業が、その製品の唯一の生産者であり、その企業の製品が、
他に密接な代替材をもたないとき、その製品は独占状態にあるという。




実際にのところ、現代の経済で独占が生じれば、
「独占禁止法」の対象となり、独占企業は分割されます。



それでもいくつかの理由により、独占は生じます。今回のブログでは、
なぜ独占が発生するのか、考えてみましょう。
独占が発生るするのは、主に次の3つの理由が考えられます。






大赤道儀室にあった黒電話 / monoooki




独占が発生する3つの理由





  • 資源の独占

1つの企業が重要な資源を保有することで独占が発生します。
このとき、当該企業は非常に強い市場支配力を発揮し、かなり自由な価格付けを行えます。

例)ダイヤモンド



  • 政府による独占

政府が1人の人間や1社の企業に、排他的な販売権を与えるために独占が生じます。
具体的には、政府は特許権や著作権によって、排他的な販売権を保護します。

例)新薬の製造権、小説の印刷・販売権



  • 自然独占

1つ以上の企業が市場全体に供給した方が、2社以上の企業で供給するよりも
費用がかからないときに生じます。

例)上下水道




自然独占は規模の経済から発生する





資源の独占政府による独占は分かりやすいですが、自然独占はやや説明が
必要かもしれません。自然独占の発生を別の言葉で言い換えると、
独占企業が利潤最大化を望む生産量において、規模の経済が生じるときに独占が発生します。



下の図は独占企業の費用と生産量の関係を表します。
ある生産量までは費用が下がり続けます。これは、最初に投下した固定費用が、
大量の販売によって、費用の分散が生じているためです。



自然独占と規模の経済








(「独占とは」シリーズ終わり)



【関連エントリ】


規模の経済と規模の不経済 その5







2013年1月10日木曜日

規模の経済と規模の不経済(おまけ)

規模の経済と技術進歩・スクウェアの事例から









「規模の経済と規模の不経済」シリーズは、その6で終わるつもりでした。
しかし、週刊 東洋経済 2013年 1/12号週刊 東洋経済 2013年 1/12号 [雑誌] で、その応用を用いている企業が紹介されています。
その企業とは、ジャック・ドーシー率いる、スクエアです。



スクエアは、スマホ(携帯端末)のイヤホンジャックに、
「スクエア・カード・リーダー」を差し込むだけで、クレジットカードによる決済を可能にした、
技術進歩を起こした会社です(YouTube参照)



小規模店舗や個人事業主など、従来のクレジットカードでは手数料が高くて、
カード決済ができなかった層を中心に、サービス開始から3年弱の間で、
100億ドルもの決済額
を達成しています。



もう一度おさらい・規模の経済について




「規模の経済と規模の不経済」シリーズでは、
企業活動の要である、利潤について「利潤 = 総収入 - 総費用」と定義します。
次に、総費用に含まれる固定費用を調整し、利潤の最大化をはかるというテーマでした。
具体的には、以下のような考え方で、平均総費用を低く抑えて利潤を確保します。


  • 大量生産が見込める→高い固定費用と低い可変費用で対応
  • 大量生産が見込めない→低い固定費用と高い可変費用で対応


生産期間に「長さ」がある場合、最初に投入する固定投入物の量(固定費用)を多くし、
長期的に平均総費用を低下させる状態のことを、規模の経済といいます。
いわゆる、「作れば作るほど(売れば売るほど)儲けの幅が大きくなる」という状態です。



逆に、生産期間に「長さ」があり、最初に投入する固定投入物の量(固定費用)を多くしても、
長期的に平均総費用を上昇させている状態のことを、規模の不経済といいます。
いわゆる、「作れば作るほど(売れば売るほど)儲けの幅が小さくなる」という状態です。



固定費用が低いのに大量生産できるスクウェア




スクウェアのミッションは、今までカード決済について手つかずだった層に、カード利用を促し、
人々に「新しい体験(週刊 東洋経済 2013年 1/12号週刊 東洋経済 2013年 1/12号 [雑誌]P41)」をしてもらうことです。




具体的には、現在、アメリカには800万か所のクレジットカード利用店舗がありますが、
中小2,600万か所の店舗には、まだカード決済ができません。これら中小の店舗に、
スクウェアが開発したカードリーダーを、行き渡らせなければなりません。



そこで、同社は小売事業者に対して、カードリーダーを無料で配り、
決済手数料を1回につき利用額の2.75%(もしくは月額275ドルの使い放題)という、
「低額」にして利用者の増加をはかっています。スクウェアは、生産のための可変費用を、
低く抑えているのです。



一方で、スクウェアの現在のミッションを、ミクロ経済学の言葉を使って表すと、
「大量生産・大量消費」のモデルです。このモデルで利潤をあげようと思うと、
最初に「高い固定費用」が必要です。つまり、開発や研究などの初期投資が、膨大となります。



しかし、スクウェアでは、カードリーダーの開発・普及のために、「低い固定費用」を採用しています。そのため、技術進歩の恩恵に浴した方法で、「費用のかからない」研究・開発投資を行っています。



開発スペースは公共施設。試作品は自作




スクウェアは、「低い固定費用」での研究や開発を実現するために、サンフランシスコにある
市民用に開放された、工作スペースで機械を動かし、試作品を自作しています。



このような工作スペースは、日本ではまだ認知度が低いようですが、
FabLab(ファブラボ)と呼ばれ、鎌倉市などで活動しています。
FabLab鎌倉のWebサイト


かつては、高価すぎて政府機関や大企業など、限られた人間にしか、触れなかった工作機械が、
技術進歩の恩恵を受けて、個人でも支払える費用で、「公共スペースにおけるモノづくり」が、
できるようになっています。(巷間、うわさされている「3Dプリンタ」の低価格機種は13~14万円)




工作機械 / HIRAOKA,Yasunobu



ミクロ経済学でいう技術進歩とは?



それでは、規模の経済規模の不経済という考え方は、ミクロ経済学の考え方から
なくなるのでしょうか?管理人は、決してなくならないと思います。



むしろ、スクウェアのような現象は、技術進歩という概念で、説明ができます。
当ブログの参考文献の一冊である、マンキュー経済学〈1〉ミクロ編マンキュー経済学〈1〉ミクロ編 では、
技術進歩を次のように定義しています。


 "科学者や技術者が新しくてより良い方法を絶えず見出している(方法)"
(P531)


スクウェアは、工作機械の技術進歩の恩恵に浴して、安価なカード決済の普及につとめます。
そのカード決済の技術進歩を受けて、また別の事業者が、「高い固定費用」「低い固定費用」に変え、新たな技術進歩を遂げます。



規模の経済規模の不経済という概念は、相変わらず残りますが、個々のサービスや製品に
おいては、スクウェアのような「技術進歩」のサイクルが、繰り返されると思います。



ジャック・ドーシーtwitterの創業者であり、2013年1月現在同社の会長も務めている。



【関連エントリ】


読書感想文で世の中を分析する バイオパンク-DIY科学者たちのDNAハック
読書感想文で世の中を分析する MAKERS―21世紀の産業革命が始まる
規模の経済と規模の不経済その6
規模の経済と規模の不経済その5
規模の経済と規模の不経済その4
規模の経済と規模の不経済その3
規模の経済と規模の不経済その2
規模の経済と規模の不経済その1



【参考文献】


週刊 東洋経済 2013年 1/12号 [雑誌]週刊 東洋経済 2013年 1/12号 [雑誌]


週刊 東洋経済 2013年 1/12号 [雑誌]



田中浩也
FabLife ―デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」 (Make: Japan Books)FabLife ―デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」
オライリー・ジャパン

FabLife ―デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」


2013年1月9日水曜日

規模の経済と規模の不経済その6

規模の経済と取引費用の問題



藤吉郎くんの、ソフトクリーム2号店における販売(生産)の条件は、次の通りです。

  1. 販売価格は常に同じ
  2. 費用は常に低くする
  3. 利潤が最も大きくなる生産量を見つける
  4. 「長期的」な猶予が与えられている

一方で、藤吉郎くんは、1日あたりの需要予測として、以下の仮説を立てています。


  1. 2号店の開店直後は、1号店とほぼ同じ需要が見込める
  2. ただし、2号店の近くで大学のキャンパスが新設され需要が増加する見込み


そこで藤吉郎くんは、「時間」「販売(生産)の増加見込み」
キーワードとして、「高い固定費用」をかけ、長期平均総費用を低下させました。
このことを規模の経済といいます。





ピン

ピン / i-eye



分業と規模の経済



それでは、このシリーズのタイトルにも使った、規模の経済は、何が要因で
発生するのでしょうか?それは、生活水準の上昇によって、自給自足の経済から、
労働者間での分業が、可能となった経済に発達したために、起こると考えられています。


"すべての仕事を1人でやろうとする者は、通常どの仕事も結局うまくできない。雇用した労働者に最大限の生産性を発揮してほしいと願うとき、企業は労働者に限定した範囲の仕事を割り当て、その限定された仕事に熟練してもらう場合が最もよい場合が多い"
(マンキュー経済学 第2版 ミクロ編 P378「第13章生産の費用」)


規模の経済によるメリットを最大限生かした古典的な例は、「国富論」の著者として
有名なアダム・スミスが視察した、ピン工場における、ピンの大量生産です。
この工場では、それぞれの労働者が、生産の各工程において、


  • ワイヤーを取り出す係
  • ワイヤーを引き延ばす係
  • ワイヤーを切る係
  • ワイヤーの先端をとがらせる係
  • ワイヤーの先端を研磨する係
  • ピンの頭部を作る係
  • 研磨されたワイヤーにピンの頭部を取り付ける係
  • 完成品を紙袋に入れる係
etc

など、分業がしかれています。スミスは、もし、各労働者が全ての工程を、1人で担当すると、
1日あたり20本のピンを生産するのも難しいとしています。



しかし、視察した工場では、各労働者が、分業を行うことによって、
1日4,800本ものピンを生産していると述べています。



取引費用と規模の不経済



もっとも、このような分業は、企業が労働者を多数雇用し、
大量生産を行っている場合にのみ実現が可能です。
そもそも、大量生産の前に、大量消費(需要)が見込めるかどうか、ということも重要です。



もし、大量生産がすでに実現している、または大量消費は見込めないなど、
生産水準がすでに高い状態にあるときには、固定費用の拡散効果よりも、
可変費用の収穫逓減効果が強く作用し、長期の平均総費用は上昇
します。
これを規模の不経済と呼びます。



規模の不経済が発生しているとき、すでに生産規模の拡大によるメリットは失われています。
企業内における「調整」の問題が、発生しています。生産規模の拡大が組織を複雑にさせ、
情報の伝達に関わるコスト(取引費用)の発生によるデメリットが、顕在化しています。



もちろん、企業が最終的な意思決定をするかどうか、費用曲線だけでは分かりません。
企業の活動目的は、「利潤 = 総収入 - 総費用」の計算式で示されているように、
総収入を増やすことも、利潤の最大化につながるからです。



ですが、次の「完全競争と供給」シリーズでは、やはり企業の費用曲線には、
重要な意味が隠されていることが分かります。
(規模の経済と規模の不経済おわり)



【関連エントリ】


読書感想文で世の中を分析する 企業・市場・法
読書感想文で世の中を分析する 組織の限界



【参考文献】


国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)


国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)


国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究 (下)


国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究 (下)



2013年1月8日火曜日

規模の経済と規模の不経済その5

大量生産・大量消費に必要な規模の経済



管理人が「物資不足」と聞いて、真っ先に思いつくのは、
太平洋戦争直後の日本の様子です。



もちろん、当時の様子を、直接体験しているわけではありません。
ですが、小説やテレビドラマなどでその様子を見ると、
自分の祖父や曾祖父の世代の大部分が、その日、一日を生き延びる
食糧にも事欠いていたことについては、想像に難くありません。



そんな貧しい人々に生存に必要な物資を、大量で安価に安定して供給しようと思えば、
生産について規模の経済を働かせなければなりません。



モノが圧倒的に不足している世の中では、モノを生産すればするほど、
長期の平均総費用曲線を低下させる
ようにする必要があります。




物資不足

Life-Size Model / d'n'c


期間による固定費用の調整



前回のブログまでで、藤吉郎くんは、時間について「長い」・「短い」という
2つの期間を与られていました。その時間の選択肢にもとづいて、
「高い固定費用」「低い可変費用」の額を決めていました。



もし、藤吉郎くんが期間について、「短い」しか与えられていなければ、
通常の需要予測(生産個数220個)にもとづいて、「低い固定費用」「高い可変費用」
選択していたでしょう(上司の信長くんより費用を最小化するように命じられていたから)


このように、期間を基準にすると、固定費用について、次の特徴が分かります。


  • 短い期間→固定費用は調整できない
  • 長い期間→固定費用は調整できる(可変費用と同じ)


ソフトクリーム製造機や冷蔵庫などの固定投入物は、牛乳やコーンなどの原材料とは異なり、
「短い期間」では購入できないかもしれません。また購入できたとしても
生産に寄与させるために使いこなすには、「長い期間」が必要となります。



期間による平均総費用曲線の違い




固定費用の額は、平均総費用曲線の形状に影響を与えます。
また期間の長短によっても、形状は異なります。期間の長短にもとづいて、
概念図を表すと次のようになります。



短期と長期の平均総費用曲線の関係



短期と長期の平均総費用曲線の関係


  1. 規模の経済→財の生産量が増加するにつれて長期的な平均総費用が低下する状態
  2. 規模の不経済→財の生産量が増加するにつれて長期的な平均総費用が上昇する状態
  3. 規模に関して収穫一定→生産量が変化しても長期平均総費用が一定のとき


長期の平均総費用曲線は、短期の平均総費用曲線よりも平らかです。
また、短期の平均総費用曲線は、常に長期の平均総費用曲線の上に位置しています。



このような曲線の形状の違いは、企業が長期では、固定費用の選択について、
融通がきくという性質を表しています。逆に短期では、決められた短期の平均総費用曲線でしか
操業できないという、性質も同時に表しています。



ソフトクリーム店の店長である藤吉郎くんは、
固定費用の選択について、裁量が与えられていたため、
その範囲内で目いっぱい融通を利かせたということになります。
(つづく)










2013年1月7日月曜日

規模の経済と規模の不経済その4

なぜ「高い固定費用」なのか?



前回のブログで、ソフトクリーム店の店長である藤吉郎くんは、
長期の需要予測にもとづいて、従前よりも「高い固定費用」をかけようとしています。
その方が、販売量(生産量)が増加したときに、平均総費用が低くなると考えたからです。



低い固定費用と高い固定費用の比較






上の散布図を観察すると従業員が1人のときと、2人のときの間で、
「低い固定費用」のときの平均総費用(青)と、
「高い固定費用」のときの平均総費用(赤)が、逆転しています。




つまり、このグラフにある通り、
藤吉郎くんは、長期的には1日あたり220個ではなく、400個が売れると考えています。
この量で、平均費用を最小に抑えるためには、最初に「高い固定費用」を投入しているのです。




Lessons learned from growing internationally / BDOInternational



藤吉郎くんに与えられたものはヒト・モノ・カネ・「時間」



藤吉郎くんの責任は厳しいものの、規模の経済と規模の不経済その2であるように、
大きな予算や労働力の決定行う権限だけでなく、「長い猶予期間」も与えられています。



つまり、藤吉郎くんには、2通りの「時間の選択肢」として、
「長い期間」「短い期間」という2種類の選択肢が、与えられています。



前回シリーズの「利潤最大化と費用」でも、固定費用について言及しました。
しかし、このシリーズの場合、期間が短く、固定費用が調整できないという前提で、
平均総費用について述べました。このような費用曲線を「短期の平均総費用曲線」といいます。



一方、藤吉郎くんが負かされたソフトクリーム2号店のように、
平均総費用を最小化するために、長期的に固定費用を調整できる費用曲線を、
「長期の平均総費用曲線」といいます。



「長期の平均総費用曲線」と規模の経済



当ブログ、「おちゃらけミクロ経済学」をお読みの方には、
いわゆる「(営利企業の)会社」にお勤めの方もいらっしゃると思います。



その会社で仕事をしていると、時おり「規模の経済を働かせる」という言葉を
聞いたことがあるかもしれません。



経済学ブログを書く前、個人的には、「いっぱい作った(売った)方が費用が安く上がる」
ということぐらいに思ってました。ですがこの説明で、良いかどうかは、状況によります。



なぜなら、その状況というのは、「固定費用を調整できるかどうか」ということが、
正確な答えのための、キーポイントとなるからです。
(つづく)





2013年1月6日日曜日

規模の経済と規模の不経済その3

藤吉郎くん、「規模の経済」を働かせる




前回のブログで、商才のある藤吉郎くんは、
信長くんのソフトクリームビジネスの、2号店を店長として任されることになりました。



そこで、藤吉郎くんは、2号店でのソフトクリーム販売のために、
自ら仮説と需要予測を立て、設備(製造機や冷蔵庫など固定投入物)の購入をはじめました。
ところが、彼はその費用として、1号店で使った倍の金額を使い始めました。



長期的には、販売量(生産量)の販売量が見込めるとは言え、
なぜ彼は、固定投入物の購入を大きくしたのでしょうか?



もし、長期的に増加したときに、可変投入物(アルバイト従業員や牛乳など)を増やして、
対応すればよさそうに見えますが・・・。



※なお、藤吉郎くんは、現在のところ、2号店は1号店とほぼ同じ販売量(生産量)を
期待できると考えています。しかし1年後には(長期的には)「すぐ近くに、大学のキャンパスが
設置されて、1号店を上回る需要の増加が見込める」という仮説を立てています。



大学近くのカフェ

cafe terras / zoetnet


「低い固定費用」と「高い固定費用」



もちろん、藤吉郎くんは、のるか反るかの「大ばくち」を打っている訳ではありません。
「お客さん次第」の需要に対応できるよう、想定される需要の幅を広く取っています。
なおかつ、「低い固定費用」「高い固定費用」の2通りのケースを考えて、
設備投資を行うことにしました。



「低い固定費用」と「高い固定費用」


「低い固定費用」と「高い固定費用」



藤吉郎くんが目を付けている、上の表のポイントは、
「低い固定費用」「高い固定費用」の2種類に、場合分けをしていることです。



そして「低い固定費用」のときには、「高い可変費用」が対応し、
「高い固定費用」のときには、「低い可変費用」が対応しています。



特に注目すべきところは、従業員が1人のとき(ソフトクリームの生産量は220個)と、
2人のとき(ソフトクリームの生産量は400個)の平均総費用です。


                「低い固定費用」        「高い固定費用」
1人のとき→→→ 131.82円(低)         134.09円  
2人のとき→→→ 115.00円                 95.00円(低)


従業員が、1人のときと2人以上のときでは、両者の平均総費用が逆転しています。
なぜ、このような現象が起こるのでしょうか?


規模の経済



実は、この表は次のように、読み取ることもできます。


  • 従業員が1人のとき(生産量220個)→規模の経済が働かない
  • 従業員が2人のとき(生産量400個)→規模の経済が働く


従業員が1人のときの生産量で、固定費用を倍にしても
その追加負担分を、220個の生産数量に対して、十分拡散することはできません。



一方、従業員が2人のときの生産量で、固定費用を倍にすると、
その追加負担分を、400個の生産数量に対して、十分拡散することが可能となります。



つまり、藤吉郎くんは、「1年後には、すぐ近くに大学のキャンパスが設置されて、
「さらに需要の増加が見込める」という長期の需要予測と仮説にもとづき、
規模の経済を働かせようとしているのです。
(つづく)







2013年1月5日土曜日

規模の経済と規模の不経済その2

仮説と需要予測



前回のブログでは、「仮説上の需要」について、こだわって記事を書いてみました。
需要にあえて「仮説上の」と修飾語をつけています。



それは、最初に想定する、需要の内容や期間によって、企業(会社)が生産のために、
最初にかける費用(固定費用)の額が、異なり、利潤に大きな影響を与えるからです。
今回のシリーズでも、具体例を用いて考えていきましょう。




固定費用・固定投入物

minster-press / leecontracting




藤吉郎くん、2号店店長に就任




前回シリーズの「利潤最大化と費用」で、信長くんはソフトクリームビジネスをはじめ、
1号店を見事にヒットさせました。



そこで、ソフトクリームビジネスで培ったノウハウをもって、
今度は、2号店をとなり町に出店することを考えています。



ソフトクリームビジネス

/ y_katsuuu


ただ、信長くんは、自分で2店舗も経営する時間はありません。
そこで、1号店の従業員で、目端が利く、藤吉郎くんを2号店の店長に抜擢して、
店を任せることにしました。



そして、信長くんが、藤吉郎くんに店長を任せるときに、
ソフトクリーム販売の心得として、次の3か条を言い渡しています。

  1. 販売価格は常に同じ
  2. 費用は常に低くする
  3. 利潤が最も大きくなる生産量を見つける

さすがはソロバン勘定に、キビシイ信長くんです。
店は他人に任せても、数字は自分でコントロールしようという、ハラづもりです。



ちなみに、藤吉郎くんは、2号店の店長として、
ソフトクリーム製造機や、冷蔵庫などを購入するためのお金を扱う権限や、
労働力としてアルバイト従業員を採用する独自の権限も持っています。



また、1~3の条件通りに、2号店を軌道にのせるためには、
1年ほどの「長い猶予期間」を与えられています。



藤吉郎くんの仮説




藤吉郎くんにとって、上司の信長くんは「頑張りましたが、利潤は出ませんでした」とは、
口が裂けても言えない相手です。そこで目端の利く藤吉郎くんは、2号店で販売する
ソフトクリームの需要予測と、固定費用可変費用についての配分を、慎重に考えました。



このとき、藤吉郎くんの頭の中にインプットされている仮説が一つあります。
「長期的には2号店のソフトクリーム販売量(生産量)は増加する」。
(仮に2号店の周りには、1年後、大学のキャンパスが新しく設置されるとしましょう)



仮説を立て、需要予測を立てた藤吉郎くんは、次に設備投資をはじめました。
しかし、ここでソフトクリーム製造機や冷蔵庫など、いわゆるビジネスの固定投入物
使う費用について、なんと1号店の倍の金額を使い始めました!大丈夫なのでしょうか?
(つづく)






2013年1月4日金曜日

規模の経済と規模の不経済その1


利潤 = 総収入 - 総費用



企業(会社)が活動をしている、最大の目的は「利潤」の獲得です。
企業(会社)が一定期間に算出する「損益計算書(P/L)」を見ると、
「売上粗利益」、「営業利益」、「税引き後純利益」etcなど、
「利潤」の概念と近いものが、必ず登場します。



本来、ミクロ経済学で「利潤」というと、人件費や経費など「目に見える費用」に加えて、
「目に見えない費用」である機会費用も存在します。
ですがここでは、ざっくりと「経済利潤 ≒ 会計利潤」ということにしておきましょう。



これら「利潤」「利益」の考え方は、「利潤 = 総収入 - 総費用」という
単純な計算式に基づいています。会社など営利企業にお勤めをしたことがない、
学生さんも、利潤の考え方は、直感的で分かりやすいと思います。



(そして営利企業に勤めたことのある方ならば、仕事時間のほとんどを
「なんとか利益」について考える(考えさせられる)ことが、仕事となるでしょう)




電卓で利潤を計算!

Calculator and Money / Images_of_Money





「事業部長」の立場で考えよう




あなたは、ある企業(営利会社)にお勤めし、新規事業の事業部長を任せられています。
社長からは、その新規事業について、次のような条件が、付けられています。


  1. 販売価格は常に同じ
  2. 費用は常に低くする
  3. 利潤が最も大きくなる生産量を見つける


また、あなたは、事業部長として、土地や設備などを購入するためのお金を扱う権限や、
労働力として、就職希望者を採用する権限も、持っています。
社長が提示した3つの条件を満たすためには、どうすれば良いでしょうか?




ビジネスマン

Always the business man. / Matt Erasmus


仮説に基づいて利潤をはかる



もし、管理人がこの会社の事業部長であれば、
社長に対して、「そんな新規事業はできません」と答えると思います。
(もっとも、こんな答えをすると、「クビ」にされるぐらい、自分の立場が悪くなるでしょう。
実務的には、「できるかどうか状況によります」と答えるのが、「おとなの模範解答」でしょう)



もちろん、そんな「正直な答え」をするのは、新規事業の内容や、
経費の具体的な数値を提示されていないという、技術的な理由に求めることもできます。



ですが、この場合、新規事業の「周りの状況」が、よく分からないというのが本当の理由です。
「周りの状況」というのは、抽象的な言い方なので、「需要」という言い方もできると思います。



需要

Spring Time Cooking Class - Kitchen Garden, Shot Tower Square / avlxyz


もちろん、企業(会社)は「供給」することが仕事で、
「需要」は相手任せになるので、それこそ「よく分からない」というものです。



従って、企業(会社)としては、「これぐらいの需要があるだろう」と、
「仮説を立てる」ことが、非常に重要になります。
その仮説を立てることなく、新規事業を立ち上げようとしたことについて、
「できません」としたことが、管理人の真意です。



では、なぜ、「仮説を立てる」にこだわるのでしょうか?
それは、その仮説上の需要によって総費用や、企業の「利潤」を大きく左右するからです。
(つづく)