おちゃらけミクロ経済学: 社会保険料とクルーグマン

2012年9月7日金曜日

社会保険料とクルーグマン

「名目的な負担」と「実質的負担」




今回のブログで社会保険料の「真の負担」を明らかにしてみましょう。







前回のブログではお話をこのように結んでいます。



"なんだか下の方の三角形が大きいですよね。
この場合、社会保険料は供給者側、つまり従業員にとって
負担が重くなる
のです"



雇用量の調整はしやすいが、労働時間の調整はしにくい




労働市場の死荷重












ポール・クルーグマンのテキストから、
この文章について、裏付けてみましょう。



"それでは、誰がFICAを支払うのか。この点を研究した経済学者はほとんどみな、FICAを支払うのは雇用者ではなく、労働者だということに同意している。こうした結論は、家計の労働供給の価格弾力性と企業の労働需要の価格弾力性の比較から出されたものだ。(中略)平均賃金が1%上昇すると労働時間への需要は少なくとも3%は減少する。しかし労働供給の価格弾力性はとても低いと信じられている"

ポール・クルーグマン「ミクロ経済学」東洋経済新報社 P154より




つまり、
雇用主は賃金(価格)が上がると、それ以上に雇用を減らすが、
労働者は、賃金が上がっても、労働量(労働時間)を、簡単に増やすことはできない




ということです。




このため、クルーグマンやマンキューのテキストでは、
FICAについて、社会保険料の負担は、「労働者の負担の方が大きい」と結論付けています。




日本の社会保険料は、
法律により労使折半で負担することが、慣例化されています。



たしかに保険料率は2で割れば、「名目的な」保険料の負担割合は、労使が同じ値になります。
しかし、「実質的」には、折半負担しているわけではないんですね~」。
このお話、管理人も経済学を勉強しててとてもビックリしたケーススタディです。




社会保険料からみる経済学まとめ




「社会保険料の誰の負担か」は、4回にわたってのシリーズでしたが、
結論するとこういうことになります。





  1. 社会保険料負担は、法律的など「名目的」に平等であるが、「実質的」には平等にできない。
  2. 社会保険料の「実質的な」負担は、需要曲線と供給曲線の傾きで決まる。



給与明細書で見落とされがちな社会保険料について、ネタを引っ張れそうなのもここまでです。
また面白そうなネタを考えるとしますか。。。。(⌒∇⌒)ノ""マタネー!!



FICAとは…


連邦保険寄与法(Federal Insurance Contribution Act)。
社会保障と医療システムのために給与から一定割合で天引きされる金額のこと。
別名「給与税」とも言われる。日本の「厚生年金保険法」と「健康保険法」に相当する制度です。



【追記】
「社会保険料の負担感は労使で異なる」ということについて、
下に上げる参考文献でも名言されて、いますので、引用文を紹介しておきます(2012年12月29日)

"経済学では、理論的にも、実証的にも、会社側の負担はは「実際には」そのほとんどが「労働者の負担となっていることが知られています。現実問題として、形式上、労使折半だからと言って、会社が半分負担してくれていると思うほど皆さんは甘い世界に生きているのでしょうか。この厳しい競争社会において、会社の経営者は、会社分の半分の負担をどうやって捻出するのでしょう。(中略)実際には、労働者の賃金を会社分だけ減らして、それをもとに会社が負担をしているのです。会社負担分だからといって、将来、会社が年金を受け取るわけではありませんから、実際に全額の年金を受け取る労働者の負担を転嫁するのは当然のことです"


(「年金問題は解決できる P84 第3章祖父と孫の年金受給格差は6300万円」 下線部は管理人)



【関連エントリ】



年金問題は解決できる! 積立方式移行による抜本改革その1
年金問題は解決できる! 積立方式移行による抜本改革その2
年金問題は解決できる! 積立方式移行による抜本改革その3
年金問題は解決できる! 積立方式移行による抜本改革その4




【参考文献】


鈴木 亘 年金問題は解決できる! ―積立方式移行による抜本改革年金問題は解決できる! ―積立方式移行による抜本改革 日本経済新聞出版社


年金問題は解決できる! ―積立方式移行による抜本改革
 

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